最近、よくテレビや雑誌などで目にする、サラリーマンの副業に関する記事。
- 月々の給料だけではやって行けない…
- スキルアップに副業を始めたい…
- 暇な時間にお小遣い稼ぎをしたい…
などと言った様々な理由から、副業を始めようと考えているサラリーマンの方も多いと思います。
しかしながら、副業を始めたくても、勤務している企業の規定で副業が禁止されているなど、中々始めることが出来ない事情もあるでしょう。
そもそも、なぜサラリーマンの副業は禁止なのでしょうか?
今回は、実際に起きたサラリーマンの副業に関する裁判の実例を踏まえ、サラリーマンの副業に関して詳しく説明していきます。
目次
多くの企業でサラリーマンの副業が禁止されているわけ?

そもそも、なぜサラリーマンの副業は禁止されているのでしょうか?
それは、企業側は自社での業務に対する影響、情報漏洩のリスク、利益相反行為などを懸念している為、禁止されているのです。
また、副業に関わる就業時間の取り扱いルールが不明瞭だ、という考えも企業にはあるようで、依然として副業を禁止する企業が多いことが実情です。
サラリーマンの副業を禁止している企業の割合は?

総務省が発表した平成29年度就業構造基本調査において、全体の就業者のうち、副業をしている就業者の割合は4.0%であり、前回の調査である平成24年度から0.4ポイント上昇しているという結果が出ました。
また、全体の就業者のうち、副業を希望する就業者の割合は6.4%となっており、こちらも前回の調査から0.7ポイント上昇していることが分かりました。
結果から、副業をしていない就業者が大多数であり、そのことからもほぼ全ての企業が副業を禁止していることがお分かり頂けたかと思います。
副業が禁止されているサラリーマンの職種は?
多くの企業で副業が解禁されている一方で、いまだに副業が解禁されていない企業もあります。
ここではどんな業種のサラリーマンがいまだに副業が禁止されている傾向にあるか見ていきたいと思います。
副業禁止のサラリーマン①:公務員

サラリーマンとは少しいいがたい職種ではありますが、公務員は一律で副業が禁止されています。
一般的なサラリーマンの就業規則と違い、公務員は『国家公務員法』と『地方公務員法』で働く上でのルールが決められています。
その国家公務員法と地方公務員法では副業に関しては下記のように規定されているのです。
地方公務員法:第38条営利企業への従事等の制限
職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社やその他の団体、若しくは自ら営利を目的とするし企業を営み報酬得ていかなる事業若しくは事務に従事してはならない。
国家公務員法: 第104条 他の事業または事務の関与の制限
職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し若しくは業務を行うにも内閣総理代位人及びその職員の所轄庁の小佐野許可を要する。
このように公務員に関しては法律で一切の副業が禁止されています。
公務員だからといって副業が一律禁止というのは少し理不尽な気もしますが、下記のような理由で禁止をしているようです。
- 公務の中で知り得た情報の漏洩を起こさない
- 公務員としての信用と信頼を担保する
- 副業において精神・肉体的な疲労を起こし本業に悪影響を及ぼさない
副業禁止のサラリーマン②:建設業

建設業の多くではいまだに副業を禁止している企業が多くいます。
建設業ではちょっとしたミスなどが身体や生命などの安全に直結します。
ただでさえ疲労をしやすい環境の中で副業を行った場合、その人や周りの人の安全を確保できないというのが一番の理由のようです。
サラリーマンの副業がバレたらどうなるの?

あなたが今、副業をしていてある程度の収入がある様ならば、きっと本業の職場の人間に副業の話などしていないことだろうと思います。
もし、自分の副業が会社にバレてしまったら、一体どうなると思いますか?
最悪は懲戒解雇
前述の通り、日本のほとんどの企業が副業を禁止しているのが現状です。
そんな中、もし副業がバレてしまった場合、どうなるのでしょうか。
企業文化も大いに影響するとは思いますが、多くの場合は以下の様な対応になります。
- 減給
- 出勤停止
- 降格処分
- 諭旨退職
- 懲戒解雇
最悪の場合は、懲戒解雇となってしまう可能性もありますが、実際にはそのときになってみないと予測出来ません。
副業をしているサラリーマンの方は、会社にバレてしまうことがないよう注意が必要ですね。
昇進や働きやすさに影響
退職は免れたとしても、職場では「副業がバレた人」というレッテルを貼られ、職場にいづらくなったり、働きづらくなったり、あるいは昇進に影響が出る可能性もあります。
副業をしている方は、職場では副業に関しては口外せず、一定額の給与を手にしている様であれば必ず確定申告を行う様にしましょう。
特に、住民税や所得税など税金関係の問題は、経理担当経由で会社にバレてしまうケースが多くありますので、きちんと自分で処理をする様心がけて下さいね。
サラリーマンの副業で懲戒解雇になるケースとは?

大抵の副業をするサラリーマンは、会社はもちろんのこと職場の同僚にも内緒で副業をしている様です。
しかしながら、株投資やFX、不動産投資などは周りに話をしていたり、職場の同僚からそんな話を直接聞いたことがあるでしょう。
投資で得た利益は副収入に当たるにも関わらず、実際に投資をしているからと言って懲戒解雇になったと言う話は、聞いたことがありません。
一体、どう言ったときに副業が懲戒解雇の対象となるのでしょうか?
本業へ支障が出てしまった場合
副業が原因で、本業へ支障が出てしまった場合は懲戒解雇の対象です。
支障が出てしまうという具体的な事案としては、
- 業務時間中も副業をしてしまう
- 副業に時間を費やし睡眠不足で集中出来ない
- 遅刻や欠勤がある
など、現状の業務に影響を及ぼす行為を指します。
あくまでも副業は副業、本業はおそろかにしてはいけません。
同業他社で勤務をした場合
本業と同じ業界や関連会社などで、副業をした場合は懲戒解雇の対象になります。
なぜ、同業他社で勤務をしてはいけないのでしょうか?
その理由は、
- 本業の会社の競合関係になってしまう
- 本業の会社に対する背信的行為になってしまう
- 本業の会社の情報漏洩の可能性がある
などが挙げられます。
副業をするのであれば、同じ業界は避けたほうが良いでしょう。
本業の会社に損害を与えた場合
本業の会社に損害を与えた場合も同様に、懲戒解雇に当たる可能性があります。
具体的に言うと、
- 反社会勢力と接点を持つ
- 本業の会社で得た技術やノウハウを副業で使う
- 詐欺まがいの副業をしている
など、会社の信頼やブランドを損なうような副業は、懲戒解雇の理由として認められてしまいます。
サラリーマンの副業を禁止することは法律違反じゃないの?

日本国憲法では、「職業選択の自由」が保証されていますので、本来であれば副業をするかどうかは個人の自由になります。
ですので、法律的に見ると企業が設ける「副業禁止」のルールはかなりグレーと言えます。
とは言え、多くの企業が「副業禁止」を就業規則の中に設けているのが現状です。
なぜ「副業禁止」とするのかは、先程「サラリーマンの副業で懲戒解雇になるケースとは?」でお伝えした事象が発生することの危惧から、大多数の企業側も「副業禁止」を掲げています。
しかしながら、副業をしていることが会社にバレてしまい、1度の注意もなく突然懲戒解雇された場合は、解雇自体が無効になる可能性が非常に高いので、専門家に相談しましょう。
サラリーマンの副業禁止に関する裁判の判例を調べてみた!

最後に、実際に副業に関して発生した裁判の実例をご紹介していきます。
裁判と言うと、難しい言葉が多く、理解しづらい部分もあるかと思いますが、ここでは簡単に噛み砕いて説明していきますよ。
定森紙業事件(1989年)
概要
原告は、紙製品販売会社の社員であったが、妻の経営する同種会社の営業に関与していたことから、会社の許可なく他会社に勤務したとみなされ、懲戒解雇を受けた。
判決
裁判所はこれらの概要を受けて、懲戒解雇を不当とみなしました。
- 解雇を有効とするには、他会社に関与したという事実だけでは不足。
- 解雇相当に値する他の事情が必要。
- 他会社に関与したことが、会社の損害になったとは言えない。
ポイント
裁判所は、他会社に関与したと言う事実だけでは、解雇事由には不十分であるとしています。
また、原告が行なっていた行為は、会社でも黙認されていたことからも、懲戒解雇は不当との判断しました。
十和田運輸事件(2001年)
概要
原告は、運輸会社にて家庭用電化製品を小売店に配送する職務に従事。
その小売店から家庭用電化製品の払い下げを受け、それらをリサイクルショップに持ち込み、代価を受けていたこと、それらの行為は原告の会社の車両を使用していたことが発覚。
その後原告は、懲戒解雇処分を受けた。
判決
裁判所はこれらの概要を受けて、懲戒解雇を不当とみなしました。
- 原告は、会社が許可または黙認していると認識していた。
- これら一連の行為が、会社との信頼関係を破壊する程ではなかった。
- 副業と見なされる行為は、2回のみであった。
- 2回の行為に関して、会社の業務に支障はなかった。
ポイント
裁判所は、原告が懲戒解雇された当時、従業員の中で周知された就業規則の様なものがなかったことから、懲戒解雇は無効としました。
普通解雇であっても、原告と会社間での信頼関係を大きく破壊する様なことではなく、職務に専念していたと判断しました。
国際タクシー事件(1984年)
概要
原告はタクシー会社に勤務していたが、父親の経営する新聞販売店で新聞配達や集金など業務の手伝いをしていたことから、就業規則違反とし懲戒解雇を受けた。
判決
裁判所はこれらの概要を受けて、懲戒解雇を不当とみなしました。
- 父親の新聞販売店での業務は、タクシー会社の勤務2時間前に完了していた。
- 新聞販売店での月収は、6万円と言う比較的低額なものであった。
- 該当する業務は、タクシー会社での勤務に支障をきたすものではなかった。
ポイント
タクシー会社の就業規定には、「副業をした場合は、懲戒解雇とする」というもののみ記載されていました。
懲戒解雇というのは、従業員にとって非常に重い制裁です。
裁判所は「会社の企業秩序を乱し、労務の提供に格別に支障をきたす程のものではない」と原告の兼業を捉え、懲戒解雇を不当としました。
サラリーマンの副業禁止に関する記事まとめ

働き方改革の浸透により多くのサラリーマンの中でも広まりつつある副業ですが、今でに副業を禁止している企業も多くあります。
多様な働き方が浸透している現在において、これまで通り一律禁止という企業は今後どんどんと減っていくのではないかなと思います。