終身雇用制度や年功序列といった、日本の企業文化が年々崩壊してきています。
また、一昔前では少数派だった転職も、今では誰もが気軽に行うようになりました。
そこで気になるのが、退職金制度についてです。
サラリーマンの人生を大きく左右させる可能性のある退職金ですが、あなたはどれほど理解していますか?
この記事では退職金の平均額や相場に加えて、計算方法等退職金に関する詳細をご紹介していきます。
目次
意外と知らない退職金の種類って?

サラリーマンがある一定の年月会社に勤めて退職する際に支給されるのが『退職金』ですが、正式には『退職給付制度』といいます。
またこの『退職給付制度』は実は支給形態により、『退職一時金制度』と『退職年金制度』にわけられており、同じ退職金でもその性質は大きく異なります。
退職一時金

退職一時金制度では、従業員の退職時に『退職慰労金』などといった名称で退職金を一括で支給する制度です。
その金額の算出方法は、『基本給連動型』や『定額制』や『ポイント制』など企業によってさまざまあります。
中小企業の多くは『基本給連動型』を採用していて、従業員数が多くなるにつれて『ポイント制』を導入している企業が増えていきます。
退職年金制度

退職年金制度では退職金を一括で支払うのではなく、退職した従業員へ分割支払いをする制度の事で退職後にあらかじめ決められた期間の退職金を受け取ることができます。
期間は、5年や10年となどの期限付きで年金を支給されるところや、終身で年金を受け取ることのできるところもあります。
ただ、一括で支払う退職金と違い支払う企業側は、年金の資金管理や運用など厳密に行い原資を守っていく必要があります。
そういった運用面を自社で管理しきれない場合には、多くの企業が外部機関を利用して委託で管理していることが現状です。
また、退職年金制度の中にも『確定給付型企業年金』と『確定拠出型企業年金』が存在しており、その仕様は法律でしかりと決められています。
確定拠出型企業年金
確定拠出型企業年金は『確定拠出型年金法』という法律でその管理は厳格に定められていて、支払われる年金の原資の拠出額が決まっている退職年金です。
年金の支払いは原則5年以上20年以内と定められています。
拠出された年金の原資を社員が自ら商品を選び運用を行う制度で、選ぶ商品次第では将来受け取ることのできる金額は、運用次第で増えたり減ったりしてしまいます。
確定拠出型年金の場合は、仮に資産が減ってしまっても自己責任となることから、ことから社員に対しての投資教育は必須となっています。
確定給付型企業年金
確定給付型企業年金は『確定給付企業年金法』という法律でその管理は厳格に定められいて、『規約型』と『基金型』2種類存在します。
年金の支払いは、5年以上の有期か終身となります。
規約型は企業が企業年金基金の運営の主体となり、従業員との年金運用ルールを定めて管理・運用・給付を担います。
基金型は外部に設立した組織が、企業年金基金の管理・運用・給付を担います。
基金型では、加入者が300名以上いることが条件となります。
退職金は法律にはない!

そもそも、退職金は法律で決められている制度ではありません。
それぞれの企業が規則として定めている制度になります。
その為、会社の就業規則に退職金についての定めが無ければ、会社側は退職金を退職者に支払わなくても違法ではありません。
退職金と言うと、定年退職するサラリーマンがもらうものというイメージが定着していますが、若手社員であっても退職金が支払われることもあります。
退職金を自分が受け取れるのか、いくらもらえるのか、と言う詳細な情報は会社の就業規則に記載されていますので、一度確認してみましょう。
サラリーマンの退職金の平均額の相場は?

それでは、気になる退職金の平均額の相場について見ていきましょう!

退職金額の平均額の相場は、上記の表のような金額となりました。
大学卒で自己都合退職の場合の平均金額なので、人により金額は前後します。
退職理由によって退職金の相場が異なる
先程ご紹介した退職金の平均額は、退職理由は自己都合としました。
各種調査では、退職金の金額は「自己都合退職」または「会社都合退職」によって相場が異なることが明らかになっています。
仮に会社都合の退職の場合は、おおむね25%~50%ほど上乗せされる傾向にあるようです。
また、他にも「勤続年数」だけではなく「学歴」「企業規模」によっても退職金の平均相場は変わってきます。
それでは、自己都合で退職した場合の勤続年数に応じた退職金の平均額を見ていきましょう。
勤続10年の退職金は?
大学卒で勤続10年の人の退職金の平均金額は115万円です。
ただ、退職金制度は会社によって全く違うものになります。
基本的には就業規則に記載されていますが、企業によっては勤続15年以上の者などの記載があるので、注意が必要です。
勤続25年の退職金は?
大学卒で勤続25年の人の退職金の平均金額は562万円です。
勤続25年は年齢で言うと45歳から50歳ですが、このころは早期退職制度の活用などをすることにより、上記の金額よりも多くもらえることもあります。
定年退職時の退職金は?
大学卒で定年退職者の退職金の平均金額は1900万円です。
現在は希望する者には65歳まで雇用するように法律で定められていますので、約40年勤め上げた人の退職金モデルとなります。
ただ、中小企業と大企業では定年退職時の退職金額は大きく離れており、中小企業がおよそ1400万円、上場企業がおよそ2400万円と1000万円の差が生じています。
最近の退職金事情は?

現在日本の雇用制度は大きな変化を迎えています。
終身雇用制度や年功序列制度が廃止され、業務の実績が直接評価につながる成果主義が浸透してきました。
これまでは少数派であった転職も頻繁に行われるようになり退職金制度を導入している企業は年々減少傾向にあるのです。
そもそも退職金制度は、企業として退職金の支払いは負担が多く、社員も企業が破産してしまうと退職金を受け取ることができなくなってしまうというリスクが生じてしまいます。
そんな中で現在注目されているのが、上部でも説明をした『退職年金制度』なのです。
自分の会社の退職金制度は?

退職金はサラリーマンの退職後の人生を大きく左右する非常に大切なお金です。
では、自分が現在勤めている会社の退職金制度はどうなっているのかご存知でしょうか?
理想は、その会社に入社する前の段階で知っておくことでしょう。
退職金制度とは、その会社が社員の人生をどのように考えているかも見えるといっても過言ではありません。
しかし、就職活動をしている段階で退職金制度を細かく見ている人は少ないでしょう。
入社後に自分の会社の退職金制度を調べるには、『就業規則』の『退職金規定』を確認すれば確認することができます。
それでわからない場合は、自分の会社が担当している『総務部』や『人事部』に問い合わせてみるのも良いでしょう。
退職金には税金はかかるの?

退職金は『退職所得』として所得に換算されて、当然税金が課せられます。
ただ、退職金に関しては通常の給与所得とは違った税金の算出方法が適応されるので、ここではその計算式や仕組みを見ていきたいと思います。
退職金の計算方法
退職金の課税退所となる退職金課税所得の金額の計算式はこちらです。
退職金課税所得 =(退職金額 - 退職所得時控除)× 50%
勤続20年以下
- 退職所得控除額 = 40万円 × 勤続年数
勤続20年超
- 退職所得控除額 = 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 - 20)
上記で産出された金額をもとに下記の表より所得税率と控除額をもとに牡蠣計算式で計算します。
退職金税額 = (退職金課税所得 × 所得税率 - 控除)×102.1%

例①:退職金1500万円の場合
- 勤続:20年
- 退職金額:1500万円
上記のモデルケースでの手取り額と税金の金額を算出してみましょう。
- 退職金課税所得控除額 = 40万円 × 20年
- 退職金課税所得額 = (1500万円 - 800万円)× 50%
- 退職金税金 = (350万円 × 20% - 42万7500円) × 102.1%
- =27万8222円
- 退職金手取り額 = 1500万円 - 27万8222円
- =1472万1778円
1500万円の退職金を勤続20年の方が受ける場合の税金はおよそ27万円で、手取り額はおよそ1472万円となました。
例②:退職金2500万円の場合
- 勤続:25年
- 退職金額:2500万円
上記のモデルケースでの手取り額と税金の金額を算出してみましょう。
- 退職金課税所得控除額 = 800万円 + 70 × 5年
- 退職金課税所得額 = (2500万円 - 1150万円)× 50%
- 退職金税金 = (675万円 × 20% - 42万7500円) × 102.1%
- =94万1872円
- 退職金手取り額 = 2500万円 - 94万1872円
- =2405万8128円
2500万円の退職金を勤続25年の方が受ける場合の税金はおよそ94万円で、手取り額はおよそ2405万円となました。
退職金は確定申告が必要なの?

通常サラリーマンが定年退職して退職金を受け取った場合は、会社によって税金の手続きなどが行われるので、確定申告等を行わない人が多いといわれています。
しかし、退職金を確定申告することによって、場合によってはお金が返ってくることもあるので確認することをお勧めします。
退職金の税金が還付されるケース
①1月~3月までに退職
仮に3月に退職したとしても3ヶ月分しか通常の給与を受給していないので、給与所得に対する控除が大きく残っている可能性があります。
この控除を確りと計算したうえで、退職所得と合わせて確定申告を行うことで、還付金を受け取ることができるのです。
②退職後の収入が少ない
①と同様120万程度の収入の場合は控除額が大きく残っています。
この控除を確りと計算したうえで、退職所得と合わせて確定申告を行うことで、還付金を受け取ることができるのです。
③退職所得の需給申告を行っていない
退職金を受け取った場合は通常『退職所得需給に関する申告書』という書類を提出する必要があります。
通常は会社で手続きしてもらえる場合が多いのですが、まれに手続きがされていない場合があります。
この場合通常の税率で退職金にも一律約20%の税率がかかってくるのですが、20%という金額はかなり高い金額なので、確定申告を行うことにより還付金として戻ってきます。
参考:サラリーマンの副業で確定申告は必須!書き方や経費の申告まとめ
サラリーマン退職金平均額まとめ

サラリーマンの退職金に関する記事、いかがでしたか?
サラリーマンの老後の人生を大きく左右する退職金。
単純に退職後のプランニングだけでなく、住宅ローンの組み方や生活スタイルまでにも影響を及ぼします。
今回はそんな退職金の平均額や相場を見ていきましたが、そもそも自分の会社の退職金制度をしっかりと理解していく必要がありそうです。
この記事を参考に自分の会社の退職金制度がどうなっているのか今一度見直してみると良いかもしれません。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。